アークティック・モンキーズ、スペシャル座談会!畠山承平 ×  妹沢奈美 × 山本幹宗

畠山承平 (The Mirraz)

ザ・ミイラズのVo, Gであり、全楽曲の作詞・作曲・アレンジを手掛け、MV等も自作する。オフィシャルサイトのバイオグラフィーにもアークティック・モンキーズが好きな事を記載するなど、根っからのアークティック好き。2006年9月にザ・ミイラズを結成。2008年12月にデビュー・アルバムをリリースし、洋邦ロックファンから注目を集める。2012年7月にEMI Music Japanへのメジャー移籍を発表。2013年10月31日には新メンバーが正式に加入し、現在ザ・ミイラズは4人編成で活動中。

山本幹宗 (The Cigavettes)

2005年4月、福岡にてザ・シガべッツを結成。G,Choを担当する。2007年にミニ・アルバムをリリースし、2009年9月にはBRITISH ANTHEMSへ出演するなど、その名を広める。2011年4月にデビュー・アルバムを発表、2012年4月にはセカンド・アルバムをリリース。しかしその後2013年9月、12月1日のライブをもってザ・シガべッツを解散する事を発表。現在、山本幹宗はくるりの「Remember me」リリースツアーにサポートギタリストとして参加中。

全てにおいて、最初聴いたときはびっくりするけど、でも、カッコいいなあってところに行くんですよね、彼らの音は

畠山「そしたら、同じのをアレックスも着ていて。びっくりしたんです。最初、アレックスは普通のシングルを着てたんですよ。そしたらある日、あれ、テカりが違うぞと。それ、俺のと同じじゃん、と!」

妹沢「すごーい! そういう見た目も含めて、これが今はカッコいいんだっていうスタンダードを、アークティック・モンキーズは今回も、作った気がします」

畠山「そう、アークティック・モンキーズはそれができてるのがすごい。もちろん、不安とかもあると思うけど、ひっぱろうとか、わからせようとしている姿勢もある。俺、最初はアークティック・モンキーズってそういうのが嫌いな人たちだと思ってたんですよ」

妹沢「あ、私もそう思ってた」

畠山「わからないやつは、わからなければいいってバンドだと思ってた。でもそうじゃなくて今は、俺たちはこういう新しいことをしていて、絶対に楽しいから、ついてきた方がいいよっていう姿勢が見えるんですよね。それが、あのリーゼントにも表れている気がするんですよ」

山本「ほんと、このレコードが一番良かったよ、驚いた。感情移入しやすいんですよ、多分。最初のころのはヤングだからね」

妹沢「感情移入しやすいっていうのは、これまではあくまで年下だけどカッコいい存在だったのが、自分たちと同じような目線にきたっていうことかなあ?」

山本「それこそ5枚目を出すと、洋楽好きのおじいさんたちも彼らをもう認めざるを得ないというか。俺のレコード、って言わざるを得ないというかね。俺がそうだから」

妹沢「なるほど、なるほど」

畠山「俺は、どうなんだろうな。もちろん1stや2ndはヤングだけど、とにかく、彼らは時代に対して新しいことをやってるっていう感覚が強かったからね。こういうのが今は流行ってるってものに対して、本人たちはカウンターをしようとしてるわけではないのかもしれないけど、今これは他にないよね、ないよねっていうものを、ずっと作り続けてる。で、今回のやつは、今このサウンドで、こういうR&B作品を作るやつがいるかっていったら、いない」

妹沢「確かに、いないですよね」

畠山「しかも、いわゆるバンドが持っているヘヴィな部分とかを捨てずにやっているところ、つまり全部を変えてこうなってないところも、すごいと思うんですよね。だから、混ぜ方なんですよね、すごいのは」

妹沢「うん、ほんとそう」




畠山「あとこれは僕もバンドマンだからかもしれないんですが、最終的に、音自体の説得力がないと、チャラくなっちゃうんです。もちろん、チャラい音楽って売れるものもあるしダメなものもあるけど、バンドとして説得力のあるサウンドを作るというのは、実は一番難しい。それを、たとえばヴィンテージの楽器を使えばそうなるかといったら、そんなことは全然ない。ギターが上手ければなるかと言ったら、ならないし。だけど、この作品にはすげえ説得力があると総合的に思わせることが出来てるのが、新作はすごいんですよ。センスというか、機材などの選び方も上手い」

妹沢「そこにはきっと、4枚を積み重ねてきた経験から学んだところもあるんでしょうね」

畠山「うん、そうでしょうね。今回、アルバムタイトルが『AM』じゃん、ようやく自分たちが今いる場所が、ここだと思えたって、バンド名のイニシャルでつけた。俺からしたら、成功を収めていてこれだけカッコいい音楽をやっていたら、アークティック・モンキーズだという自負が既にあると思っていたんですよ。でも、ここにきてようやく、自負を持っている。それが不思議でもあるんだけど、逆に、バンドマンとしたら確かに5枚目くらいまで、完全にオリジナルで自分たちらしいアルバムを作るのは難しいかもしれないとも思う。それを、今、ようやくタイトルにつけていること自体も、すごいなと思って」

妹沢「そう考えると、彼らは音楽に対してとても謙虚なバンドでもありますよね。新作の取材で心に残っているのがジョシュ・ホーミに関するアレックスの答えで、『彼みたいな人がいることで、音楽は変わっていってもいいんだという勇気をもらった、同じことをやり続けるバンドにならずにすんだ』というようなことを言ってるんです」

畠山「そう、たとえばR&Bのメロディーをちょっと使ってみようと思ったんだよとか、誤解されやすいと思うんです。いわゆる、ロックバンドがこれやっちゃだめでしょ、と誤解されそうなことを、でもちゃんとカッコよくやろうとしてる。それが、最近のアークティック・モンキーズの活動としてカッコいいんですよね。もちろん最終的に音を聴いてカッコよくなかったらどうしようもないんですけど、実際に音が超カッコいいから」

山本「そうだね」

畠山「あと1曲目の"ドゥ・アイ・ワナ・ノウ?"で……あれは打ち込みって言っていいのかな」

山本「なんか、膝で叩いてるようなやつね」

畠山「そうそう。俺、アークティック・モンキーズのカッコいいと思うのは、バンドというものの姿勢を崩さずやってることなんですよね。日本でバンドをやってると、クオリティを上げるために同期を使っちゃうんですよ。要するに、打ち込みを足してクリックを聴いてやらなきゃいけない。で、別にそれがいけないわけじゃないけど、アークティック・モンキーズというバンドを壊さずにどうやればいいかを、ライヴで同期を使わないとか、打ち込みをやらない、行き過ぎたシンセを使わないってところの発想に、バンドのバランスを崩さないようにやってるなって俺は思ってたんです」

妹沢「うんうん」

畠山「で、びっくりしたのが、今回は1曲目で打ち込みっぽい音が入ってる。わ、これ、アリなんだって。でもライヴではそれをマットが叩いていて、やっぱりあえて、同期ではなく生のグル―ヴを生かしてる。サウンドとしてはいろんな音にチャレンジしようという気もあるし、より聴きやすい音楽を作るにはどうしたらって考えてるとも思うんだけど、じゃあ打ち込みサウンドみたいなのをやってみようぜとなっても、チャラいのをやらないっていう答えが、新作にはあって。アルバムごとに、新しい楽器をちょっと入れようとするじゃないですか。今回は、12弦ギターと打ち込みで。で、音楽の幅を広げようとしてるのも当然あるんだろうけど、その、ギリギリの部分の選択が上手い。ここまでいっちゃったらマズいよね、っていうところまでギリギリ言って、でもセーフ、みたいな」

妹沢「確かに。全てにおいて、最初聴いたときはびっくりするけど、でも、カッコいいなあってところに行くんですよね、彼らの音は」

山本「しかも、畠山みたいなコアなファンがいいっていうんだから、これはもう最高じゃないかというね」




 ……予定時間を大幅に延長するも、誰も帰ろうとせず話は続きます。ファンとしての愛がどうして冷めることなくますます深まり、そして新作『AM』の音楽性を高く評価しているのか。加えてバンドに近い世代のロック・ミュージシャンたちがアークティック・モンキーズを見つめる目線は、ロックンロールの「今」をも期せずして浮き彫りにします。  変化を恐れず突き進んだ結果、新作『AM』で今や揺るぎない孤高の頂点に立ったアークティック・モンキーズ。『AM』で彼らの音楽的な挑戦したものは何だったのか、その視点はどこから来ているのか、そもそもカッコ良さの秘訣は何か。そのあたり、実際に『AM』を聴く際のヒントに、ぜひ。そして最近初めてアークティック・モンキーズを知った人は、3人がアツく語った過去の4作品も聴いてみてくださいね。