
畠山「(笑)。こういう音楽をやったら新しいかなっていう想像は、できるんですよ。俺は、しちゃうタイプ。日本でこういうのやってないから、これとこれを足したら新しいじゃん、とかね。俺が最近やりたいのは、グランジとヒップホップを足すこと。でも、具現化しようとすると、すごい難しいんです」
妹沢「それは、どうして?」
畠山「やっぱり、ただチャラくなってもダメだし。じゃあグランジって何、それはニルヴァーナなのとなった時、そのままそれをやればいいかといえば、そうじゃない。そういう時の混ぜ方というか、選び方が(アークティックは)上手いと思う。ミイラズは僕が一人でアレンジを作ってるんですけど、アークティック・モンキーズはメンバーの一人一人がアイデアを出し合ってるんですよね」
妹沢「ほんとだ、彼らはそうですね」
畠山「で、アレックスがちょっとスランプ気味になった時に、メンバー2人が裏声で試してたらカッコよくて、これで行こうぜと5枚目になった、という記事を見たんですよ。バンドとして全員が、新しく面白いものを作ろうって意識があるんだなと。それが、ほんとすごいなと思います」
妹沢「確かに、取材でハードな音の話になってくると、必ず『や、それはジェイミーが好きなんだよ』っていう話になるんです」
畠山「ああ、そうですね」
妹沢「で、ヒップホップを一番好きなのは……」
畠山「マットですね」
山本「ドラマーがヒップホップを好きなのは、OKAMOTO'Sと一緒ですね」
妹沢「(笑)そうなんだ。で、ソウル・ミュージックを好きなのはアレックス。それは、彼のソロ名義で出した『サブマリン』のサウンドトラックからもわかる。全員の興味が、上手く絡まってるんですよね」
畠山「そうなんですよね」
妹沢「ちなみに新作の『AM』の70年代ハード・ロックの要素は、彼らが全員でツアーバスでよく聴いてる音楽なんだそうです。ただ、そう考えると、3rdは、何をツアーバスで聴いてたかってのが、よくわからない」
畠山「3rdは、録音するのに砂漠に行って、そこからネタを集めて作ったって言ってるから。その前の何かがあまりなくて、たぶん、ジョシュ・ホーミと一緒にやりてえなっていうところに身を任せて作業したんじゃないかな。で、『サック・イット・アンド・シー』を作る頃は、USインディーの面白いのが出てきてたからそれを聴いたのかなと」
山本「そう、それが俺はよくわかんないんだよね。俺『サック・イット・アンド・シー』を聴いて、普通にフィル・スペクターとかスタッグスとかモータウンとかの、スロウなナンバーのまんまだと思ったの。USインディーっていうキーワードは、俺の中に出てこなくて。コード進行とかそういうので言うと、まるまる、そのまんまなんだよね」
畠山「多分それって、元々あったものじゃないかな。あのアルバムはアレックスがマンションの4階でアコギ使って弾きながら作った曲を、みんなでレコーディングしたんだよね。それまでは歌から作ってるのはメインじゃなかったから、そうやって作ることでアレックスの好きなコード進行が出てきて、そういう風になったのかもね」
山本「ああ、なるほど。それいい、いいね。そういうのもあって、プロモーションの時とかは弾き語りばっかりだったのかな。だから、この5枚で言うと、俺に近いレコードは『サック・イット・アンド・シー』なんですよ。いい曲だなって思う」
妹沢「このアルバムを作り終えた頃のアレックスの取材でとても記憶に残っているのが、今、カントリー音楽のソングライティングのクラフト感、手法の面に興味があると話していて。でも、そこから新作の『AM』の音が来たから、やっぱり私は、またまた、かなり驚きましたよ」
畠山「俺、『AM』の良さをもうちょっと上手く伝えられないかなと思っていて。1stや2ndが好きな日本人のファンは、いると思うんだよね。で、ライヴを日本でやればお客さんも入る。前に武道館もやってるしね。セールス的にも、俺はまだまだもったいないなと思ってる」
妹沢「うんうん」
畠山「で、今作の良さみたいなのを、もっといい言葉で言えないかなと、俺はすごく思ってる」
山本「それは、難しいねえ」
畠山「難しいけどね。俺、ブラック・サバスとかのヘヴィ・ミュージックのリフとかもあるけど、単純に、『今回はR&Bをバンドでやりました』ってだけでもいい気がする。メロウな雰囲気、って言うのかな」
山本「重いとかヘヴィとかだと簡単になるから、そうは言わない、っていうね」
畠山「ドレイクのカヴァーをライヴでやってるんだけど、原曲を聴くと、いわゆるR&Bなわけね。それを、アークティック・モンキーズがカヴァーすることで、アークティック・モンキーズになってたりね」
妹沢「うんうん、なるほど」
畠山「1stや2ndのような速いロックを求めている人たちが、今回のを聴くのはなかなか難しいと思うけど、音楽として今回の曲はどれもとてもレベルが高いと思うから。好みももちろんあるけど、聴く側もチャレンジして聴いてみて欲しいですね。最近は洋楽をあまり聴かない子もいるみたいで」
妹沢「だから、最近のステージではアレックスはイヴ・サンローランとか着て、ものすごくカッコよく……」
畠山「ちょっといいスか! 俺、同じの着てるんですよ(注:この日の革ジャン)。しかも俺の方が先だから」
妹沢「マジですか!?」
山本「(笑)へえー!」
畠山「俺の方が先だから。俺は、アレックスを真似しすぎていて、アレックスを超えるためにはもっと高いものを着なきゃいけないって、がんばって買ったんですよ」
山本・
妹沢「(笑)」